産地
はじめに
お茶は飲料としてコ-ヒ-とならんで世界中で一番多く飲まれています。
世界の茶葉年間生量は約315万tにも達しており、お茶を飲まない国はないといわれるほど世界の人々によって消費されています。
1gで1杯飲めるとしますと全世界での年間消費数量は約3兆杯にも達します。具体的に言いますと、全世界の60億の人々が年間500杯を飲むほどの量に達しています。
一方コ-ヒ-は豆で年間600万トンの生産量がありますが、コ-ヒ-豆10gで1杯飲むとすると6,000億杯にしかならず、お茶とは大きな差があります。
お茶は人類の発展とともに消費を拡大し、種々の茶葉が作り出されて淘汰されてきました。長い歴史の中で香味の改良が加えられて、人々の嗜好に合う香味が選択され淘汰が繰り返されてきた結果、現在では全体量の約75%が紅茶で占められるまでになりました。
中国で発明されて改良が加えられた後、17世紀以降の欧州特にイギリスにもたらされてからは、様々な歴史を経て香味が作られました。中国茶の種類は非常に多くあり、2000年に出版された「中国名茶誌」という本には1017種類のお茶が記載されています。
内訳は60%が緑茶で、残りが紅茶と烏龍茶等の特殊茶に分類されています。緑茶は全国で広く17省2自治区で生産されており、紅茶は11省、青茶(烏龍茶)は6省と台湾で生産されています。
緑茶
緑茶は茶葉の発酵を止める為に釜で炒られますので、香りが高くお茶を淹れた時には濁らず透明で艶があります。
1. 龍井茶(ロンジン) 浙江省杭州市(中国十大名茶)
中国を代表する緑茶で「色・香・味・姿」の要素がそろっており『四絶』と呼ばれています。浙江省杭州市の周辺で生産されたものを西湖龍井と呼んでいます。
2. 洞庭碧螺春(ピロチュン) 江蘇省太湖洞庭山(中国十大名茶)
碧は緑、螺は田螺(タニシ)でたにしの様なうず巻き型で、翡翠のような美しい緑色の春先のお茶という意味で命名されたお茶です。
3. 黄山毛峰 安徽省黄山市(中国十大名茶)
宋の時代から有名で欧州に輸出されていた松羅茶(シンロ)を引き継いだ雲霧茶です。
中国十大名茶としては他に
4. 信陽毛尖 河南省信陽市 5. 六安瓜片 安徽省六安市 6. 都均毛尖 貴州捷都均市
があります。
白茶
白茶は中国独特のお茶で、弱発酵茶に属し福建省が主産地です。大白種と呼ばれる芽の白い産毛の多い種類の茶樹から作り、日光に晒す萎凋と乾燥工程だけで作られます。
1. 銀針白毫
福建省福鼎市及び政和県産で、白い産毛が多い大白茶の芽だけを摘んで作られており、香りの特徴があるためかつては欧州の貴族の間でもてはやされたことがあります。
2. 白牡丹
福建省建陽市、政和県、松溪県や福鼎市中心に大白茶のある地域で作られています。
黄茶
黄茶は多くの種類がありますが、ほとんど知られておらず、唯一中国十大名茶とされる君山銀針が有名です。(湖南省岳陽市) 湖南省洞庭湖の君山島で作られているお茶ですが、生産量が少なく高級品の殆どが欧米や国内の愛好家の間で消費されています。
殺青(釜炒り)によって発酵を止めた茶葉を「悶黄」という嫌気的な状態にして、軽い後発酵の工程で茶葉を変化させるもので独特の香味があります。初烘(半乾燥)後に初包といって牛皮紙に包んで箱に入れて36〜48時間くらい放置して作られています。
青茶
青茶(烏龍茶)は茶葉の発酵を釜炒りによって途中で抑制したり止めたりするので半発酵茶または部分発酵茶と言われます。発酵の度合いは軽い包種茶から紅烏龍茶までの10%〜80%までの多くの種類があります。
使用部位は新芽ではなく開いた開面と言われる若葉と若く柔らかな茎を使用して作られます。
1. 武夷岩茶 福建省武夷山市(中国十大名茶)
福建省武夷山の山中に自生する自然交配茶樹より作られる鳥龍茶の種類で、他の烏龍茶に比べて発酵が強いため香りと濃厚な風味が特徴で、『岩韻(回甘)』と呼ばれる独特の後口と余韻があります。大紅袍、水金亀、白鶏冠、鉄羅漢を四大名欉と呼んでいます。
2. 鉄観音 福建省安溪県(中国十大名茶)
福建省安溪県で発見された茶樹から王士譲という人が茶葉を作り、時の皇帝乾隆帝に献上して其の名前を賜ったとされる優良品種です。香りのよさと飲んだ後の音韻という余韻があります。
現在では清香型と濃香型が作られています。清香型は発酵と火入れが軽く、濃香型は発酵と火入れが清香型に比べ強くされています。
3. 鳳凰単叢
広東省潮安県鳳凰山地区で宋代より知られる産地で、鳳凰単叢という名称の樹から作られるお茶の総称を言います。
種類が多くあり花の香り、果物の香り、茶樹の形や外形などによって80種類以上の名前があります。香りの品種名には蜜蘭香鳳凰単叢、肉桂香鳳凰単叢、桂花香鳳凰単叢、玉蘭香鳳凰単叢など十大香品種があります。
4. 香檳(シャンピン)
烏龍(膨風茶) 台湾茶を代表する茶葉で、英語のchampionチャンピオンが中国語に変換してできた言葉です。欧米では「フォーモサウーロン」や「オリエンタルビューティー」と言う名前で親しまれています。
発酵度合いが70〜80%と最も高く、紅茶と烏龍茶の中間のようなお茶で、茶葉全体が紅く水色も少し薄めの紅茶のような鮮やかな色で、「東方美人」や「紅烏龍」の別名でも呼ばれます。
高級品は葉が厚く一芯二葉摘みで先端部に白毫が多く、香味は成熟した果物(梨のような)の香りで味は蜂蜜に例えられます。香りはウンカという小さな昆虫が若葉や茎から樹液を吸うような、一種の食害を起こすことを利用して作られます。傷ついた茶葉の修復防御反応の過程で香りの成分が作られ特徴が付与されます。
5. 凍頂烏龍茶
台湾を代表する烏龍茶で、南投県鹿谷郷の凍頂山一帯で作られていて球状をしています。
6. 文山包種
発酵度は15%〜20%と最も低い部類に属します。名前の由来は長方形の紙2枚を重ねて四両(一両=37.5g)の茶葉を載せて四方包みという包み方で販売したことから名が付けられました。
日本の植民地時代に研究開発が進んで完成されました。主な産地は台北県の坪林郷文山やその周辺にあります。
7. 高山茶 阿里山・杉林溪・梨山・玉山・霧社廬山
凍頂烏龍が名声を得たことから、消費が飛躍的に伸びて高級茶の供給が不足し、新規の茶産地の開拓が盛んになった結果、南部中央山脈に沿う標高1,000m〜2,600mの地域で作られる高山茶ができました。
紅茶
紅茶は完全発酵茶で生まれは中国ですが、現在では世界のほとんどが英国式紅茶となっています。
ダージリンやウバなどの有名銘柄の紅茶は、中国からもたらされた小葉種の茶樹やその改良種から作られています。1823年にインドのアッサムでイギリスのブルース大佐が大葉種のアッサム種の茶樹を発見するまで、中国の独壇場となっていました。
1. キーマン紅茶(祁門紅茶) 安徽省(中国十大名茶)
世界三大紅茶銘柄の一つ。福建省の茶商が19世紀中ごろに祁門へ行って紅茶作りを行った結果成功を収めました。キーマンは煙臭くクセが強く嫌う人もありますが、祁門香の出る種類で作られるため、タンニン含量が少ないために苦味や渋味が少なく、バラのような香りや上品な甘味と鮮やかな水色で独特の雰囲気が漂います。
産地の祁門県は安徽省の最南端一帯で、観光で有名な黄山の西に位置します。 中下級品はアールグレイティーの原料としてベルガモットの香油で新しい紅茶と変化しています。
2. 正山小種 福建省武夷山市星村鎮桐木村
紅茶を松葉で燻煙した紅茶で商標ラプサンスーチョンの名で主に欧州で消費されています。生産量は少なく、福建省武夷山奥の江西省との境の桐木村産のものを正山小種といい他産地のものと区別しています。
正露丸のような強い匂いの紅茶で、くせも強いですがミルクティーにすると個性的な東洋趣味のお茶になります。
黒茶
黒茶は血液や体内を浄化し、肝臓やダイエットにも良いといわれています。麹菌による後発酵をした特殊なお茶で、特異な熟成した香りを有して緑茶、烏龍茶、紅茶に次ぐ生産量があります。散茶と緊圧茶(固形茶)があり、産地は湖南・湖北・雲南・四川・安徽・広西・広東などの省で生産されています。
タンニンの多い大葉種のため緑茶には向かないため、後発酵で渋味を減少させています。ワインのように熟成の進んだ年代物は角が取れてまろやかな味わいとなります。
自然発酵タイプと強制発酵のタイプがあります。
1. 雲南普洱茶 雲南省普洱県
雲南大葉種から作られます。自然発酵と強制発酵があり、さらに固形の緊圧茶と散茶があります。
2. 六堡茶 広西省壮族自治区梧州市近郊蒼梧県六堡郷
後発酵茶で土の室の中で発酵させます。外観は条長、黒褐色で香りや味には陳香があるといわれていますが、外観は大振りで茎が混じりかなりカビ臭が強くて埃っぽい味がします。
花茶
花茶は一般的にはジャスミン(茉莉花マツリカ)の花、金木犀(桂花)の花やバラ(叙瑰花マイカイカ)の花などの香りを茶葉に付香した茶葉を言います。茶葉と花をサンドイッチ状にして付香します。
茘枝や桃の果汁や柑橘類の果皮油など天然素材で香り付けされたお茶もあります。
中国での消費ではジャスミン茶が圧倒的に多く利用されています。近年ジャスミン茶と様々な花などを用いた工芸茶といわれるお茶が登場してきています。 工芸茶 湯を注いだあと茶葉が開き、中から色とりどりの花が出現してくるという手品のようなお茶です。1986年に安徽省で作られた黄山緑牡丹という工芸茶が発端となり、現在では多くの種類が存在します。「五彩金花」「双龍戯珠」「錦上添花」「海貝吐珠」などがあります。